この記事は約 11 分で読めます。
Contents
作ってみたい「薬膳」
「薬膳」って何?
中国では、古くから【 薬食同源 】として、「食事=薬」として考えてきた歴史があるそうです。
原始時代は、雑草や魚肉などを、手あたり次第に食したために、病気や食中毒がよく発生したと言われ、それを防ごうとする手段として発達したのが、「鍼灸」や「漢方薬」などの治療法なのだとか。
また同時に「食物」も、無毒で味のよいものは「食材」に、ネギやショウガなど、味はよくないが薬効があるものは「生薬」にと分類していったと言います。これらの「食物がもつ薬効」を日々の食事に利用していったたものが、「薬膳」として伝えられているのです。
ただ中国では、「薬膳」というのは、改めて言葉にしなくてもいいくらい、生活の中にとけ込んでいっているものなのだそうです。
「冷えているときに、温かいものを食べる。」とか、
「暑いときには、スイカを食べる。」とか、
「こうゆう具合のときには、あの食材を入れる。」とか、
そういう工夫が、普通の家庭で日常的に行われていると言います。

素敵ね。
きっと、「薬膳」って、改まって何かを作ることではないんですよね。生活の中での【 お母さんから家族へ送られる愛情の一つ 】なのだと思います。
-150x150.jpg)
でも、日本にもあるよね! ママはいつも「こういうときにはこれを食べるといいんだよ!」って教えてくれるよ!
食事の組み立て
だから、「薬膳」というものを日常の中に取り入れたいというときは、
まずは、自分や家族のいまの「からだの状態」を十分にわかっている必要があります。すると、【 いまのからだに必要なもの 】が見えてきますよね。
そして、【 一つ一つの食材がもっている効能や特性 】を知っていくことも大切です。すると、「今の自分や家族のからだが喜ぶ食材、相性のいい食材」というのがわかってきます。
そういう【 食事の組み立て 】が「薬膳」なのです。
一つ一つの食材がもつ「効能」
では、そんな「食材」一つ一つの個性っていうのを、改めて見ていってみましょう。

身近にある食材もすごいのよ!
やまいも
「アンチエイジング効果」「疲労回復」「滋養強壮の効果」があると言います。
消化を促進して、慢性の下痢や食欲不振、慢性疲労を改善します。また、肺の機能を高めて、喉の渇きや咳を鎮める作用もあります。そして、腎の精力を高めて老化を防止し、夜間の頻尿や寝汗、耳鳴りを改善する作用もあります。
さらには、健やかな発育も促すので、特に子どもは常食していくといいと言われます。
更年期の月経不順に悩んでいた50歳の女性。
5~6㎝のやまいもを毎日食べるようにしたところ、月経不順が改善したそうです。※1日10㎝ほどを食べ続けると、美肌効果も期待できるのだとか。
< 注意点 >
生で食べると口や肌がかゆくなる人は、加熱して食べると、症状が和らいだり、
出なくなることもあると言います。
しそ
発汗を促して冷えをとるので、かぜで熱や寒気があるときによく使われます。また、ストレスやイライラ、喉のつかえを改善します。
「食欲増進効果」や「殺菌効果」もあるので、梅干しにも活用されていますよね。
また、魚やカニは体を冷やす作用が強いため、冷えをとる効果があるシソと一緒に摂ると、中毒をおこしにくくなるとも言われています。刺身のツマにも利用されているのは、そのためですね。
香りの成分は揮発しやすいので、生食がおすすめです。< 食べ合わせ >
『+ しょうが』 ‥ イライラ、かぜのひきはじめに効果的。
香りに薬効があるので、お茶にするときは、葉を刻んで5分ほど煮だすだけにしましょう。
刻んだしょうがを加えると、からだを温める効果がアップします。
< ワンポイントアドバイス >
水を少し張った容器に茎、部分をつけて保存しておくと長持ちします。
にら
腎の働きを高めて陽気を補い、体を温めます。足腰の冷えや腰痛の改善、滋養強壮効果が期待できます。
香り成分には、血のめぐりを高めて、血栓や動脈硬化、狭心症を予防する効果もあるのだとか。また、疲労回復効果が高く、免疫力もアップするので、かぜや肌荒れ予防にも効果的です。
体を温める作用が強いので、熱がこもっている人やのぼせのある人は、食べ過ぎに注意です。
また、胃腸が弱っているときなどは、胸やけを起こしやすいので気をつけましょう。< 食べ合わせ >
『+ クルミ 』『+ 黒ごま 』『+ みそ 』 ‥ 冷えがある男性のED(勃起不全)を改善。
ニラをさっとゆでて、すり黒ごまとクルミ・みそで和える。
生殖エネルギーを司る「腎」の働きを高めるクルミとの相乗効果で、強壮作用が高まります。
ごま
白と黒で、味や風味だけでなく、効果もそれぞれ異なります。
黒ごま
肝や腎の機能を向上させて、血や生命力を補う作用があり「滋養強壮」や「アンチエイジング」に効果があります。老化による足腰の冷えや腰痛、めまい、耳鳴り、白髪の改善も期待できます。
白ごま
体を潤す働きが高くなります。肌の乾燥を解消したり、便秘の改善に効果的です。
ごまは殻が硬くて消化吸収が悪いので、すりごまや練りごまにして食べるのがおすすめ。
特に練りごまは、栄養素を効率的に摂ることができます。
あずき
赤飯や和菓子でお馴染みの食材ですよね。
水分の代謝を整えて「老廃物を排出させる作用」があります。からだの余分な熱を冷ますと同時に、利尿作用が高く、梅雨時期の湿度によるむくみや、体の重だるさの緩和に適しています。
また、「たまった毒素を出す働き」があり、かゆみを伴う発疹や吹き出物、腫れ物の改善にも効果的です。
【 産後のケアには「あずき粥」がおすすめ 】昔から、あずきは「産後の養生」に食べられてきたそうです。産後にできやすい「血栓の解消」や、出産・授乳で失われがちな「鉄を補給する」働きがあるのだとか。
< 食べ合わせ >
『+ こんぶ』 ‥ むくみに効果的。
あずきと切ったこんぶを、やわらかくなるまで煮ます。味つけは塩だけであっさりと。
あずきと昆布の利尿作用が、むくみ解消に効果的です。
※ ゆで汁にはあずきの薬効が出ているので、ゆでこぼさないようにするといいそうです。
ごぼう
ごぼうは、日本以外で食べている国は、ほとんどないそうです。
発汗や利尿により、からだの中の余分な熱を取り除くので、口の渇きや、熱のある腫れ物、吹き出物等の改善、かぜ予防に効果的です。
水溶性・不溶性の食物繊維を豊富に含み、便通を改善して老廃物を排出したり、血中のコレステロールを吸着するので、動脈硬化の予防や糖尿病の改善にも効果が見込めます。
腸を浄化する作用が強い反面、「体を冷やす」解熱の食材でもあります。胃腸が弱い人、年配の人は、量を控えめにしましょう。< ワンポイントアドバイス >
ごぼうは、保存は、カットしてしまい、赤梅酢をかけ、真空状態にして保存するといいです。

玉ねぎ
玉ねぎは、血や気の滞りを改善し、体を温める作用があります。気のめぐりがよくなると、消化が促進されて、胃もたれや食欲不振、お腹の張りなどが解消されます。
また、血中コレステロールや中性脂肪の代謝を高めて、動脈硬化や血栓などの生活習慣病を予防します。
切ったときに目に染みる成分は「硫化アリル」といって、ビタミンB1と結合して「疲労回復効果」を高めます。これは、加熱すると変化してしまうため、生食での効果が大きいです。最近流行っている「酢タマネギ」は、美味しく手軽に生食していけるのでいいですね。< 活用アドバイス② >
玉ねぎの、根っことの境目の白い部分。ここは、根っことつながっている所なので、すごく生命力の高い場所なんです! 栄養素もたくさん詰まっています。少し硬いのですが、包丁で切り目を細かく入れれば、全然食べられますので、ぜひ、食していってくださいね。

< ワンポイントアドバイス① >
【 1日1個の玉ねぎで「痰」を代謝 】
「痰」がたまると、血中のコレステロール値や中性脂肪の値が高くなります。玉ねぎには、この「痰」の排出を促す作用があります。1日1個の玉ねぎを常食していくと、その効果が期待できるそうです。
< ワンポイントアドバイス② >
【 茶色い皮も捨てないで 】
茶色い皮の部分には、ポリフェノールが多く含まれています。また「抗酸化作用」がビタミンEより強く、細胞や血管の老化を防止したり、
血圧を下げるなどの効果があります。
アンチエイジングを期待するなら、1日5gほどを煎じて飲むといいでしょう。また、皮を煮出して色を出し、染め物を行うことも出来ます。
-150x150.jpg)
ひとつひとつの食べ物が、こんなにいろいろなチカラをもっているんだね!

いまは、ネットでも簡単に調べられるのよね! 私は「薬膳辞典」で、たまに調べたりするの!・・「おなかの調子が良くないな‥ 何かお腹にいい食材はないかしら‥」とかって。
日本にもある風習
受け継がれてきた風習や知恵
春には山菜を食べる
山菜系は「解毒作用」がとても強いです。そして、春【 解毒の季節 】なのです。体からもいろいろなものが排出されるし、感情も出てくる時期だと言います。
夏野菜は体を冷やす
トマト・きゅうり・なす・ゴーヤ etc.
暑い夏には、体を冷やす作用のあるものが、自然の中で、自然に作り出されるのです。
お刺身には薬味がつく
「抗菌・解毒作用」のあるワサビだとか、「冷えをとる」シソだとか、そんなものを生の魚に合わせて食しますよね。これも、体のことを考えた組み合わせなのです。‥昔からの知恵ですね。
それらが見えづらくなった現代‥
スーパーの棚には、季節に関係なく、いつでも同じ野菜が並んでいます。
熱帯地方の食べ物が、いつでもどこでも買えます。
ハウス栽培などで、本来の時期をずらして栽培されるものもあります。
・・「自然のリズムや風習」「食べ物の組み合わせ」「おばあちゃんの知恵袋」・・
わからなくなってしまっていますよね。でも、きっとみんな、どこかでそういう感覚を忘れていないのでしょうね。だから「薬膳」という言葉にそそられるのではないでしょうか?

確かに。「昔からの習わし」とか「 自然のリズム」って、何か【 心地いい 】のよね!
感謝の気持ち
ちょっと「身近にある食材たち」に目を向けてみたら、一つ一つの食材が愛おしく思え、それぞれに感謝の気持ちが湧いてきますよね。そういう気持ちをもって、日々の食事というのを組み立てていけたら、きっと、それが「薬膳」にもなっていくのかもしれません。
いろんなことが見えづらくなってはいるのだけれど、ちゃんと【 そこを守っている人たち、大切にしている人たち 】がいます。そして、そんな人たちと出会えるのは、自分の中にある「感覚」に正直になれたとき。日々の一つ一つに「感謝の気持ち」を持てたとき。
だから、大切にしていきましょうね。自分の気持ちも、自分の身近にあるものも。
-150x150.jpg)
「ありがとう」を口癖にしていくといいのかな!
< 参考書籍:「 毎日使える 薬膳&漢方の食材辞典 」ナツメ社 >
< 参考書籍:「 12カ月の薬膳レシピ 」Gakken >